【解説付】村上春樹『騎士団長殺し』あらすじと、読者の感想や反応まとめ!最小限のネタバレあり

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《目次》

村上春樹の最新作『騎士団長殺し』発売
『騎士団長殺し』のあらすじ
・『騎士団長殺し』のあらすじ「第1部 顕れるイデア編」
・『騎士団長殺し』のあらすじ「第2部 遷ろうメタファー編」(少しネタバレ)
『騎士団長殺し』の感想
他の方々の感想
・絶賛派(肯定的感想)
・ダメ出し派(否定的感想)(少しネタバレ)
・中間(どちらともいえない・中立的感想)
・感想・番外編
『騎士団長殺し』の評価・書評
『騎士団長殺し』で心に残った言葉
『騎士団長殺し』のセリフに込められたメッセージ
村上春樹とトルストイ
『騎士団長殺し』と仏教
「頼ることのできる足もとの堅い地面」が必要
村上春樹の作品にみる無意識
村上春樹新作『騎士団長殺し』《まとめ》

村上春樹の最新作『騎士団長殺し』発売


村上春樹の新作長編『騎士団長殺し(英題:Killing Commendatore)』が新潮社から発売されました。 



第1部 顕(あらわ)れるイデア編」 
第2部 遷(うつ)ろうメタファー編」 

の2部作、同時発売です。  

それは孤独で静謐な日々であるはずだった。騎士団長が顕(あらわ)れるまでは。

作品紹介には、こうあります。  
『1Q84』から7年――、 
待ちかねた書き下ろし本格長編  

その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。 
夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた……それは孤独で静謐な日々であるはずだった。 
騎士団長が顕(あらわ)れるまでは。

『騎士団長殺し』のあらすじ


では、村上春樹最新作騎士団長殺し』のあらすじです。  

「第1部 顕れるイデア編」のあらすじと、  
「第2部 遷ろうメタファー編」のあらすじと、  

分けてお話ししましょう。(結論には言及しません)  

『騎士団長殺し』のあらすじ「第1部 顕れるイデア編」

主人公は、美大を出た36歳の男性の画家。  
主人公「私」が自分のことを書き記した形の一人称小説です。  
(妻に対しては「僕」と言っていますし、ごくたまに「おれ」という表現もしますが)  

主人公は突然、妻から離婚話を持ち掛けられ結婚生活をいったん解消しますが、九ヶ月ほどいろいろあって、結局もう一度結婚生活をやり直すことになります。  

その九ヶ月あまりの日々にあったことがメインとして書かれているのが今回の小説です。  

妻と別れて家を出た主人公は行き場がなかったのですが、雨田雅彦という友人が家を貸してくれ、そこに住まうことになります。  
そこは雨田雅彦の父である著名な画家・雨田具彦のアトリエでした。  
雨田具彦は今は寝たきりの認知症になっており、アトリエは使われていなかったのです。  

ある日、主人公はアトリエの屋根裏「普通ではない力が漲っている」不吉で不思議な絵を見つけます。  

その後、法外な高額で肖像画を描いてほしいという謎の男が現れたり、深夜に鈴の音が聞こえるようになったりし、さらに、謎の騎士団長が現れます。  

そして……  

「第1部のあらすじ」は、こんな感じでしょうか。  

『騎士団長殺し』のあらすじ「第2部 遷ろうメタファー編」(少しネタバレ)

(※結論にはまったく触れませんが、少しネタバレがあるのでご注意)  

主人公と関わりを持った少女(中学1年で亡くなった主人公の妹との関連性が暗示されている)が行方不明になり、主人公はその少女を助けるためにリスクを犯します。  

ここから『騎士団長殺し』というタイトルと、「顕れるイデア」「遷ろうメタファー」というサブタイトルとが直接関係する展開となってきます。  

そしてラストにはあの出来事が……  

「第2部のあらすじ」は、ここまでにしておきましょう。

『騎士団長殺し』の感想


次に感想です。  

新作『騎士団長殺し』は、いわばムラカミワールド全開の作品でした。  

謎に謎が重なり、次の展開が気になってページをめくらせる力と、ありえないはずのない世界を現実の世界と融合させて描ききる筆致力はさすがです。  

現実と非現実、存在と非存在、現実と夢、目に見えるものと見えないもの、事実とイデア(観念)の世界、この融合が素晴らしい。  

そしてこの「目に見えるもの(具体的なもの)」と「目に見えないもの(抽象的なもの)」の両方が大事だという内容が散りばめられているのですが、同時に、この両方があいまいで、あやうい人間の姿も描かれています。  

それは、主要な登場人物の言葉の中によく表れています。  
自分という存在の意味が、自分がこうしてここに生きていることの理由が、今ひとつよくわからなくなってきました。 
これまで確かだと見なしていたものごとの価値が、思いもよらず不確かなものになっていくみたいに。


 『騎士団長殺し』村上春樹(新潮社)

この登場人物は、かなりの財産を築いた男です。 
現実や理論、「0、1」の世界を重視し、そういう世界に生きています。 


しかし、目で見える、手で掴める「確か」なはずのものが、実際は不確かなものだと気づいていく。  

だからといって、目に見えないものを信じる力も弱いのです。 
さらにこの人物はこう語ります。 


私はそのときふとこのような思いを持ったのです。 

この世界で何を達成したところで、どれだけ事業に成功し資産を築いたところで、私は結局のところワンセットの遺伝子を誰かから引き継いで、それを次の誰かに引き渡すためだけの原義的な、過渡的な存在にすぎないのだと。 

その実用的な機能を別にすれば、残りの私はただの土塊(つちくれ)のようなものに過ぎないのだと。


        『騎士団長殺し』村上春樹(新潮社)


これはもうニヒリズム(虚無主義)の世界ですね。 まさに存在の意味生きる目的の喪失が如実に告げられています。  

実際、私たちは何が確かなのか分からない世界に生きているといえましょう。  

村上春樹の新作も、そのことを私たちに間接的に告げ、その克服の道を模索している姿を描いているように感じられました。  

他の方々の感想



ネット上の他の方々の感想を集めてみました。  

・絶賛派(肯定的感想)
・ダメ出し派(否定的感想)
・中間(どちらともいえない・中立的感想)
・番外編


の4つに分類しています。  

絶賛派(肯定的感想)




私は発売日に買ったんですが
何か昔ほど村上作品を読みたいという欲求がわかず、


1日ほど積んだあとで読み始めたんですが 
最初は内容的に主人公の離婚話や画家としての 
仕事の話がメインで 


文体がカフカや1Q84に比べると堅苦しいというのも相まって 
少し読んでいて退屈だったんですが 
四分の一ほど読み進めて免色という 
本作品のキーキャラクターが 
現れたあたりから一気にスリリングで 
ミステリアスで面白くなり 
時間が経つのを忘れるほど夢中になりまして 
イデア編の最後まで読み終えてしまいました。 


これだけ読んでいて続きが気になってしょうがなくなる作品は久しぶりでした。 
さすがは村上春樹といったところでしょうね。 
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ダメ出し派(否定的感想)(少しネタバレ)



ストーリーはなんじゃこりゃ感が否めない。 
あるいは既視感ありまくりと言ってもいいかもしれない。 
彼の「とても長い長編」の特徴である、オウム・サリン事件のような現実に起こった悲惨な事件を題材にして衒奇的幻想小説に仕上げる、という手法がそのまま引き継がれているし、手法だけでなく井戸のような小道具まで「また底に潜るんですか~」という感じで出てくる。


中間(どちらともいえない・中立的感想)


これは、いままでだと「第3部」があるパターン、のようにも思われるのですが、個人的には、もうこれで終わりのほうが幸せなんじゃないか、という気もするんですよ。 
しかし、これで終わりだと、あまりにも「小さい世界の話」でもある。うーむ。  

ただ、「原点回帰」しているようで、少しずつ、以前とは違うところに着地してもいるんですよね。 
この『騎士団長殺し』って、これまでも村上春樹さんの長編では存在していた「主人公や世界にとっての、明らかな敵」が、なかなか見えてこないところがあるのです。 
それは、村上さん自身、そして読者にとっての、良い意味では「成熟」だし、悪い言葉にすれば「妥協」なのかもしれません。
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感想・番外編



『騎士団長殺し』の評価・書評


『騎士団長殺し』の評価はどうでしょう。 いろいろな評価がなされていますが、その一つ、文芸評論家富岡幸一郎の評価の一部を紹介しましょう。  


4年ぶりの長編、ファンならずとも期待は高まる。肖像画家の「私」という一人称で物語の糸は紡ぎ出され、謎の依頼人と接触するなかでミステリアスな興味も湧く。(中略)  

全編を通して「何か…」とのフレーズが反復される。「何かを描きたい」が「何もない」。主人公の描く肖像は「ただの無なのだ」。それは実は、作家自身の自画像ではないのか。  

新しい部分といえば、登場人物が画家という設定。3年前に亡くなった親友、安西水丸さんへのレクイエム(鎮魂歌)か?また仏教的なシーンも登場し、僧侶であった村上氏の父…


『騎士団長殺し』で心に残った言葉


『騎士団長殺し』の中で「心に残った言葉」を紹介します。


第1部 顕(あらわ)れるイデア編」からのものと、 
第2部 遷(うつ)ろうメタファー編」からのもので、お互い関連しあっています。 

『騎士団長殺し』のセリフに込められたメッセージと解説


最初の方の場面。 
主人公が、心の中でつぶやいた言葉です。  

「私は、静かな海の真ん中を泳いでいる最中に、出し抜けに正体不明の大渦に巻き込まれた泳ぎ手のようなものだった」

「私は材木につかまって、流れのままに流されているだけだった。 
あまりに漆黒の闇で、空には星も月も出ていなかった。 

その材木にしがみついている限り溺れずにすんだが、自分が今どのあたりにいて、これからどこに向かおうとしているのか、そんなことは何ひとつわからなかった」 

「おれはこれからどこに行こうとしているのだろう、(中略)おれはいったいどこに来てしまったのだろう? ここはいったいどこなんだ? いや、そのもっと前に、いったいおれは誰なんだ?」


『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』村上春樹(新潮社)



これは実際に主人公が漂流していたわけではなく、心の状態をたとえたものです。  

あなたはこのような気持ちになったことはありますでしょうか?  

ただ何かに必死にしがみついてやり過ごしているけれど、これからどうなるのか分からず不安なとき。  

周りに希望の光は見えず暗澹(あんたん)たる心持ちになったとき。  

とても大変な時期にこのような気持ちになりがちですが、もっと広い視点でみますと、人生そのものがこのような状態とも感じられてきます。  

どこから来たのかも知らず、どこへ行くのかも分からない。
気が付いたら生まれていて、人生の荒波の中を生きていかねばならない。


誰かを頼り、そのときそのとき何かにつかまりながら生きていく。 
そのつかまっているものが、趣味であったり、お金であったり、恋人であったり、地位財産であったりと色々違ってはいるけれど、大きな人生という流れから見れば、ただヒシと材木にしがみついて流されているだけなのかも知れません。  

村上春樹とトルストイ


村上春樹氏はインタビューの中で  

「10代は19世紀小説ばかり読んでいた。 
ドストエフスキー、トルストイ、ディケンズ、バルザック。 
体に染み込んでいる。物語はなくてはならないものです」  

(村上春樹氏「公開インタビュー」発言要旨)


と語っておりますが、ここにあげられている一人トルストイの『人生論』に、このように書かれている箇所がありました。  

人生とはなにか、人生の幸福とはなにかということを知りもしないのに、こうした人たちは、自分がいっぱし生きているように、思っているのだ。 

全然なんのあてもなしに、波のまにまにただよっている人が、ちゃんと目的地にむかって泳いでいるのと、ひとり決めにして思い込んでいるようなものである。 

     『人生論』トルストイ 訳:米川和夫 (角川書店)

    
人生をあてどもなく漂っている感覚。

トルストイによれば、まずそのことに気づくことが大事だと言っています。 本当は目的地と見当違いの方向に進んでいるのに正しく進んでいると思い込んでいると、進めば進むほど、目的地から遠ざかってしまいかねませんから。  

まず、流され漂っている自分を知る。 

そして、そんな自分がよって立てる大地を見つける。 

この二つが大事でしょう。 

『騎士団長殺し』と仏教

『騎士団長殺し』には、仏教にまつわる挿話も出てきます。  
そして、こんなセリフもありました。  

涅槃(ねはん)は生死を超えたところにあるものです。 
肉体は死滅したとしても、魂は生死を超えた場所に移っていることもできるでしょう。 
この世の肉体というのはあくまでかりそめの宿に過ぎませんから。 

  『騎士団長殺し』村上春樹著 新潮社
ちなみに村上春樹のお祖父さんは京都の寺院の住職で、お父さん僧侶を兼業でしていたようです。  

先に紹介したセリフで、海の真ん中を泳いでいる最中、大渦に巻き込まれ材木につかまる云々、と語られている部分を引用しましたが、仏教では、このうような荒波のたえない人生を海に例えて「難度の海(なんどのうみ)」と言われています。  

空と水しか見えない海の真ん中に漂っているようなものが私たち。  
どこから来て、どこへ行くのかも知らない。  
知らぬ間に生まれていて、死んでどこに行くのかも分からない。  
しかも、諸行無常(しょぎょうむじょう)といわれるように生きている間もしっかりとした間違いないものはどこにも見当たらない。  

ただ、材木や丸太にしがみついて生きているのが人生なのかもしれません。  

だからこそ、変わらないしっかりとした幸せを見つけることが大事になってくるのではないでしょうか。  
仏教は、荒波多き人生を渡す大きな船に例えられます。  
大きな船とは何か? それはまた別の機会にお話ししたいと思います。  


「頼ることのできる足もとの堅い地面」が必要


『騎士団長殺し』の主人公も、何より必要としているのはあくまで
「頼ることのできる足もとの堅い地面」

  『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』村上春樹(新潮社)
だといっています。 

しかも、その堅い地面は目に見えるものとは限りません。 

実は目に見えないところにこそ、大切なものがあるのかも知れません。 

村上春樹も、そのことを強く感じているようです。 

それは今回の『騎士団長殺し』に限らず、彼の作品は意識の奥底にある無意識について書かれたものが多いところからも、それを伺い知ることができます。 

村上春樹の作品にみる無意識


例えば、『海辺のカフカ』は、タイトルからしてそうです。     

陸地、そして海辺は、心理学的な意味が込められています。   


  

今回の『騎士団長殺し』でも、無意識の象徴ともいえる    

雑木林 

祠(ほこら) 

屋根裏   

夢   

  
といったものが繰り返しでてきます。  

ということで、無意識についての話になってきましたが、ちょっと長くなりましたので今回はこれくらいにして、ちょっと深読み気味なこのテーマの解説については、次回のコチラの記事をお読みください。 
   ↓↓↓↓↓ 
村上春樹と無意識の再発見 新作『騎士団長殺し』をちょっと深読み内容解説
村上春樹の最新作『騎士団長殺し』では、「現実と非現実の境界があいまい」という感覚が全編に漂っています。 いわゆる「無意識」に関する内容が村上春樹の作品の魅力になっているように感じます。その「無意識」という視点から内容を深読み解説していきます。 そして、この意識と無意識の両方を知ることが本当の幸せになる上でとても大切だといわれます。 ちょっと深読みした記事がコチラです。

村上春樹新作『騎士団長殺し』《まとめ》


非日常の世界にトリップさせてくれるムラカミワールド全開の物語。  

●短いセリフにも考えさせられる奥深さがある。  
 それは哲学仏教にも通ずるものがあるのかもしれない。  

無意識にまつわる物語ともいえる。(詳しくは次回の記事で)  


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